スタジオでの数ヶ月の生活が全てを変えた!
当時の情熱は半端ではなかったですね。一応ビザの関係でPrattの大学院には在籍していたので、週何回かの夜の授業にはでなくてはいけなかったのですが、その他の日はできるだけスタジオに泊まり込む生活に突入しました。
一日中スタジオの仕事に従事し、夕方には近くのコンビニで安い夕食を買い、戻って夕食のあとは広大なスタジオに一人でお泊りということになります。
なんせニューヨークのことですから治安も心配です。セキュリティーアラームをセットしていざ始動という感じです。
ガンガンに音楽を流してスタジオにセットを組んでいきます。夜の8時ぐらいにセットを組み始めて、商品撮りのセットが出来上がるのが数時間後。そのあと撮影を開始し、それが終わるのが深夜過ぎ、それから暗室に入ってフィルムを現像し、乾燥させ、プリントまで仕上げます。プリントが出来上がるのはもう朝の5時頃でしょうか。
フィルムを乾かしている間などにセットを解体していきます。朝の6時頃には全て何もなかったようにスタジオを綺麗にしていました。8時を過ぎるとスタジオの関係者たちが出勤してきます。それまで短時間の仮眠をとるわけです。
信じられないあの情熱とエネルギー!
写真家の方がスタジオに来るのが通常は8時か9時です。朝の撮影のある時は当然もっと早く来ることもあります。彼が出勤してくると「ちょっといいですか」と断って、昨夜撮影した幾つかの写真を見せるわけです。
いつもびっくりしていましたね。「昨夜撮ったのか?」「マジで?」という感じでしたね。こっちの根性を見せた感じですね。
いろいろと批評を受けて、またその日の仕事を全てこなしていくわけです。スタジオの仕事は過酷です。撮影の準備、掃除、整理整頓、ペンキ塗り、暗室作業、ロケ、毎日ほとんど寝ずにできたのも若さと情熱があったからだと思います。私は写真とは関係のない世界で大学院まで行きました。写真を始めたのは27ぐらいだったので焦りがあったのも確かです。
なんとかしなければ、、という気持ちが人一倍強かったのは確かです。
このスタジオで経験したわずか3ヶ月ほどの経験が私を別人にしてくれました。わずか3ヶ月の間に私は写真学校で習うであろうほとんど全てのことを習得したのです。
学校などでは学べないであろう実際の撮影現場での様々なテクニックやライティング。全てのカメラの使い方・ビジネスのやり方などなど言えばきりがありません。それらをこの短期間に習得できたのは今から考えてみるとまさに奇跡的なことだったと思います。